東日本大震災では小野川の上流にも被害が発生しました。ここ開運橋近くでは、護岸に使用していた銚子石が川中側にせり出す形で崩れてしまいました。(写真下)銚子石は、別名、犬吠砂岩と言って、その名の通り犬吠埼灯台下の海岸付近で産出されていた石です。砂岩独特の「ざらっとした」手触りと波に揉まれたことによって生まれた独特の風合いが特徴で、かつては石仏などにも広く使われていました。ところが現在では在庫がなく、かといって類似する代替品で修復してはせっかくの統一された景観が台無しなってしまいます。そこで川から崩落した石を一つひとつ拾い上げ、弊社まで持ち帰っては、社員総出で綺麗に洗い流し、結果、見事に再利用させ積み上げることができました。天然資源は、時を経てその表情を変え、長く持たせることで価値が高まるものもあります。建造物の中には定期的に新品に交換し世代交代をしていくべきものもありますが、銚子石のような貴重な石材は、丁寧にケアして後世に引き継いでいきたいものです。
土木工事は、自然の姿に手を加え、時に派手な造形を生むこともあり、稀に自然破壊と揶揄されることもあります。一方本件のように壊さず捨てず原型を維持していくために腐心することもあります。地味な作業ではありますが、私はむしろそうした仕事に携われたことに誇りを持っています。